ほぼ日刊イトイ新聞の本(糸井重里)

 

 

糸井さんの本、2冊目。

 

恥ずかしながら、この本を手に取るまで

「ほぼ日」こと、ほぼ日刊イトイ新聞を知らなかったのだけど、

ほぼ日は、1998年にイトイさんが始めた

ネット上で"ほぼ"毎日更新してるコンテンツサイト。

 

当初はきっと読み物の記事の掲載が

メインだったんだろうけど、

今見ると、いろんな面白い商品を販売してたり

かなり幅広いコンテンツが並んでいる。

 

この本は、そのサイトを立ち上げるまでと、

立ち上げてからの数年間を描いた社史のようなもの。

 

よくある社史本は、何十年もの長いスパンで描かれてるけど

この本のほとんどは、サイトが走り始めてからたったの3年について。

文庫版の出版に合わせて追加された最後の1章もそこからたったの3年後。

その分、最初の苦労したんだろうな~という期間のことが

ぎゅぎゅっと詰まっている。

でも、苦労したんだろうな~と想像はできるものの

決して悲壮感が漂っているわけではない。

こどもは古くならない。」でも感じた糸井さんの

ポジティブなエネルギーをじわじわ感じた。

 

今では当たり前のインターネットが

まだみんなの当たり前ではなかった頃。

糸井さんは、その可能性にわくわくして「ほぼ日」を始めた。

 

今はインターネットの弊害とか闇とか、

負の面も見えてきてるから、

それなりに大きなネットメディアは警戒心があるだろうし

慎重だったり、守りに入ってたりするだろう。

きっと「ほぼ日」だって、そういう苦労はたくさんしてるに違いない。

でも、この本ではそういうことは殆ど語られない。

クリエイティブがイニシアティブをとって

純粋にうれしい、楽しい、素敵!を発信し続けることを

前向きに追求してきた糸井さんのライフワークを

垣間見ることができる。

 

ほぼ日は今後もちょくちょくのぞきたいと思った。

アプリも発見して、早速インストール。

 

糸井さんご本人が毎日更新してる

「今日のダーリン」だけでも見ると、

日々心のサプリになりそうな気がする。

アンチレイシスト・ベビー(Ibram X. Kendi/渡辺由佳里)

 

渡辺由佳里さんが訳した本。

しかも、テーマは人種差別とくれば読まねばと

早速図書館で借りて読んだ。

 

これは余裕があるときに

英語と日本語両方とも購入して持っておきたいな

と、思うほど、いい本だった。

 

作者のIbram X. Kendi氏は、思えば聞いたことがある

How to Be an Antiracist (English Edition)」の作者。

ポイントだけを抽出して子ども向けにまとめたのが

この本らしい。

 

今回読んだ日本語版には、社会学者の明戸隆浩さんの

解説があって、かなり丁寧で分かりやすい。

でもそんな解説があっても、果たしてこの本の

メッセージを消化しきれてるかしら?と、

思うほど、実は読み応えがある。

 

これは、是非とも大元の

How to Be an Antiracist (English Edition)」を読んでから

また再読したいと思った。

 

と、同時に人種差別問題のテーマを日本に移したとき、

どういうことが言えるんだろう?という疑問も湧いた。

 

アメリカを中心に起こったBlack Lives Matterの運動は

記憶に新しいし、これまで人種差別問題には

関心を持ってきたけど、自分が触れてきた情報が

アメリカを舞台にしたものに偏ってきたことは

自分の反省としてある。

日本での人種差別問題を掘るにあたっては、

この解説を書いた明戸隆浩さんは

かなりいい糸口になりそうなので、

彼の著書なんかも読んでみたいな。

 

 

家の庭と犬とねこ(石井桃子)

 

石井桃子さんの短いエッセーを集めた本。

 

題材はさまざまで、

飼い猫のこと、飼い犬のこと、

花のこと、食事のこと、子どもの頃の思い出や

東京での生活や、鶯沢での農業生活のことなど。
(鶯沢は宮城県。今の地名は栗原市

石井桃子のことば」で紹介されている

石井桃子さんの人生を断片的に切り取って

直接のぞけたような感覚で、

山でおいしい空気を吸ってきたような

穏やかな余韻が残る。

 

1907年に生まれ、

第一次、第二次世界大戦の両方の時代を経て

2008年に101歳の生涯を閉じた石井桃子さん。

 

この本には、戦争が与えた影響や、

重みが所々登場するものの

大変な時代でも人々の日常生活があった、

そんな、よくよく考えてみれば

当たり前の場面が描かれていた。

 

時代は違っても、人は人で

生活は生活で、家族や友人とのつながり

自然との関わり合い、人生に抱く感覚は

共通するものがある。

 

そして、文章を通じて感じる

石井桃子さんの人柄が何とも魅力的。

真面目で、決して全面的に社交的とは

言えなさそうだけど、愛情が深い。

マイペースで、芯がある。

 

「ひとり旅」で書かれているように

ひとりでいる時間はさみしい時間ではなくむしろ、

「感受性が強くなり、まわりのものに

 心が開ける気さえする」時間だという。

 

ますます、石井桃子さんのファンになってしまった。

ついに入塾です

この冬休み、長男は塾の冬期講習に通ってみていた。

 

去年の夏は最低限で、ということで

小規模塾の柔軟性に甘えて算数だけ通ったけど

冬は、4教科受けてみようよってことで頑張った。

9日間と、結局大手と比べると少し日数も多めだったけど

本人は楽しく通えたみたいで、

塾の先生も、いい姿勢で、クラスの子とも

いい雰囲気で受講していましたよ、と言ってくれて一安心。

 

もう1月からそのまま通っちゃえば?

と、言ってみたけど、

本人は5年生から、という意思が強いらしく

受験年度で5年生がスタートする2月から。

ということになり、手続きをしました。

 

早速週末に親向けの説明会があり

春期講習まではどんなカリキュラムか、

どんな風に勉強していってほしいか、

なーんてあたりの話を2時間ほど聞いてきた。

 

いよいよって感じだけど、

まぁ力まず。

まず2月は週3で塾に通うというペースに慣れるのを
目標に、サポートしていきたいね。

 

息子よ,自分の未来のために、がんばってくれたまえ。

ノンちゃん雲に乗る(石井桃子)

 

石井桃子さんが私と同い年の頃に刊行した自身作の物語。

 

先に「石井桃子のことば」を読んでいたから

余計にだと思うけど、本当に子どもの心というものを

理解している人だからこそ書けた本だなと思う。

 

時代設定は戦前だけど、描かれるノンちゃんの

気持ちの移り変わりは、いつの時代も共通のもの。

 

子どもでも読める、ちょっと不思議なファンタジー作品で

大人になってから読んでも、共感を誘う描写が

たくさんあって、ノスタルジックな気分に浸れる物語だった。

 

石井桃子のことば(中川李枝子ほか)

 

糸井重里さんの「こどもは古くならない。」に

石井桃子さんのこんな良い言葉が登場した。

 

「子どもたちよ

 子ども時代を しっかりと

 たのしんでください。

 おとなになってから

 老人になってから

 あなたを支えてくれるのは

 子ども時代の『あなた』です。」

 

石井桃子さんは、絵本の翻訳とかしてる人だよな~

っておぼろげな知識しかなかったけど、

この言葉に誘われてこの本を読んでみたら

とっても、とっても素敵な方だったということが分かった。

 

戦前1907年に生まれ、いくつもの激動の時代を

生き抜き、2008年に101歳の生涯を閉じるまで

子ども向けの本や物語を送り出し続けた石井桃子さん。

 

いい本、そしていい言葉が

いかに子どもの心を豊かに育てるか。

それを身をもって伝え続けた。

 

日本女子大学英文学部で英語を勉強した後に出版社に就職。

あるきっかけでプーさんの物語と出会って翻訳を始め、

その後数多くの作品を訳していった。

今の私と同い年の頃には、自身作の物語「ノンちゃん雲に乗る」を刊行。

初めての海外留学をして、海外の出版業界を視察したのが47歳。

その後、60代になっても、何度も海外に赴き

良い本を探し、有名な作家とも多く交流をもった。

そして、最後の訳書の刊行はなんとなんと、96歳の時。

A. A. ミルンの自伝「今からでは遅すぎる」だ。

本当にすごい。

 

この「石井桃子のことば」は、そんな彼女の人生を

振り返りながら、本の題名の通り彼女が残してきた

いろんな言葉を紹介していくのだけど、

とても真面目で、知性にあふれ、自分にも他人にも厳しく

とっても愛情深い石井桃子像を感じた。

その愛情というのも、子どもをただ

弱くてかわいく、守るべき存在として見るのではなく

対等な人間として扱い、尊敬の念をもって

接していたことがうかがえる。

かっこいい人だったんだな~。

 

私が目指しているのは映像翻訳で絵本の翻訳ではないけれど、

分野に関係なく、翻訳をする人に必要な心意気を

石井桃子さんから学べたような気がする。

人生の教科書 よのなかのルール(藤原和博、宮台真司)

 

 

14歳からの社会学」年末から読んでたこの本。

 

全体通じて、自分が大人になってようやく

理解し始めた色んな社会問題の根底にある

"よのなかのルール"が分かりやすく解説されている。

 

恥ずかしながら、ようやくこの本を読んで

理解できるレベルに達しつつある私だけど、

もっと若い頃、何なら中学生、

高校生の頃にこの本に書かれてる視点で

世の中を見れていたら、

今とは違う自分になっていただろうなと思う。

物事の本質をとらえる思考力が

全然違っていただろうし、

思い返すとふわ~っとやり過ごしたな、

なんて思うことももっと地に足ついた形で

残せたかもしれない。

 

自分の子供たちには、早いうちから

そんな視点をもってほしいな、なんて思った。

 

「14歳からの社会学」同様に、

この本も今の時代に合わせた改訂版を出してほしい。