石井桃子のことば(中川李枝子ほか)

 

糸井重里さんの「こどもは古くならない。」に

石井桃子さんのこんな良い言葉が登場した。

 

「子どもたちよ

 子ども時代を しっかりと

 たのしんでください。

 おとなになってから

 老人になってから

 あなたを支えてくれるのは

 子ども時代の『あなた』です。」

 

石井桃子さんは、絵本の翻訳とかしてる人だよな~

っておぼろげな知識しかなかったけど、

この言葉に誘われてこの本を読んでみたら

とっても、とっても素敵な方だったということが分かった。

 

戦前1907年に生まれ、いくつもの激動の時代を

生き抜き、2008年に101歳の生涯を閉じるまで

子ども向けの本や物語を送り出し続けた石井桃子さん。

 

いい本、そしていい言葉が

いかに子どもの心を豊かに育てるか。

それを身をもって伝え続けた。

 

日本女子大学英文学部で英語を勉強した後に出版社に就職。

あるきっかけでプーさんの物語と出会って翻訳を始め、

その後数多くの作品を訳していった。

今の私と同い年の頃には、自身作の物語「ノンちゃん雲に乗る」を刊行。

初めての海外留学をして、海外の出版業界を視察したのが47歳。

その後、60代になっても、何度も海外に赴き

良い本を探し、有名な作家とも多く交流をもった。

そして、最後の訳書の刊行はなんとなんと、96歳の時。

A. A. ミルンの自伝「今からでは遅すぎる」だ。

本当にすごい。

 

この「石井桃子のことば」は、そんな彼女の人生を

振り返りながら、本の題名の通り彼女が残してきた

いろんな言葉を紹介していくのだけど、

とても真面目で、知性にあふれ、自分にも他人にも厳しく

とっても愛情深い石井桃子像を感じた。

その愛情というのも、子どもをただ

弱くてかわいく、守るべき存在として見るのではなく

対等な人間として扱い、尊敬の念をもって

接していたことがうかがえる。

かっこいい人だったんだな~。

 

私が目指しているのは映像翻訳で絵本の翻訳ではないけれど、

分野に関係なく、翻訳をする人に必要な心意気を

石井桃子さんから学べたような気がする。