家の庭と犬とねこ(石井桃子)
石井桃子さんの短いエッセーを集めた本。
題材はさまざまで、
飼い猫のこと、飼い犬のこと、
花のこと、食事のこと、子どもの頃の思い出や
東京での生活や、鶯沢での農業生活のことなど。
(鶯沢は宮城県。今の地名は栗原市)
「石井桃子のことば」で紹介されている
石井桃子さんの人生を断片的に切り取って
直接のぞけたような感覚で、
山でおいしい空気を吸ってきたような
穏やかな余韻が残る。
1907年に生まれ、
第一次、第二次世界大戦の両方の時代を経て
2008年に101歳の生涯を閉じた石井桃子さん。
この本には、戦争が与えた影響や、
重みが所々登場するものの
大変な時代でも人々の日常生活があった、
そんな、よくよく考えてみれば
当たり前の場面が描かれていた。
時代は違っても、人は人で
生活は生活で、家族や友人とのつながり
自然との関わり合い、人生に抱く感覚は
共通するものがある。
そして、文章を通じて感じる
石井桃子さんの人柄が何とも魅力的。
真面目で、決して全面的に社交的とは
言えなさそうだけど、愛情が深い。
マイペースで、芯がある。
「ひとり旅」で書かれているように
ひとりでいる時間はさみしい時間ではなくむしろ、
「感受性が強くなり、まわりのものに
心が開ける気さえする」時間だという。
ますます、石井桃子さんのファンになってしまった。